ドラム缶窯・「炭焼き教本」
笹原 洋
1.準備工程
工程
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内容
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備考
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(1)炭材 |
@コナラ、クヌギを炭焼きの3週間から1ヶ月前に伐倒し、太さ8cm長さ80cmに割り揃え雨を避けて保管 |
生乾きがよい。乾燥しすぎると炭焼き時に燃えてしまう |
A孟宗竹(黒ずんでいる4年生)を炭焼きの100日前に伐倒し、肉厚8mm以上の部分を幅5cm長さ85cmに割り揃え節抜きし、雨を避けて保管 |
(2)窯詰め |
割竹は内側を上向きにして、できるだけ隙間のないように詰める。
細い材は下へ。下部3層は70cm(排煙口を塞がない)
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(3)セットアップ |
@窯蓋の取り付け |
隙間に粘土を詰める |
A焚き口をはめ込む |
B前面土留め ブロックを窯の前に積上げる |
C土盛 ブロックおよび窯を土で盛り上げ覆う |
密閉、断熱 |
D焚付、薪材の用意 |
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E通風口調節材 直径5cm、長さ10cmのパイプ(空き缶でも可) 耐火煉瓦6個 |
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F炭収納袋 |
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Gその他 ウチワ 2枚、 木酢採取用ペットボトル 2L 2個、 排煙温度測定用温度計 |
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ドラム缶窯(埋設前)
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窯出し
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木酢液採取中
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窯掃除
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2.炭焼き工程
排煙温度を測定し、煙の色を勘案して焚き口の調節をする。
以下の表に炭焼きの着火から窯止めまでに要する時間と温度、煙の色と焚き口の開閉状態を示す。
工程
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焚き口・通風口
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煙突口
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概略時間 |
窯温度℃ |
煙温度℃ |
煙の色 |
煙の臭い |
酢液
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特記事項 |
1.口焚き |
薪を燃やし送風 |
全開 |
30〜60分 |
〜275 |
〜75 |
白濁 |
水気多し |
X
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ウチワ2枚で送風を続ける |
2.口焚き停止(炭化開始) |
薪除去し通風口に蓋 |
全開 |
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275〜 |
75〜 |
白色:勢い強し |
いがらっぽい |
X
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セルロースが熱分解 |
開口調整
温度上昇度合いや煙の勢いを見て適宜調整する。
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通風口に連動 |
15分 |
−
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−
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濃白:安定 |
−
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○
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煙が安定したら酢液採取 |
3.(炭化中) |
約5時間 |
320〜 |
80〜 |
濃白淡黄色 |
刺激臭 |
−
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380〜 |
90〜 |
白淡黄色 |
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リグニンが熱分解 |
400〜 |
100〜 |
黄褐:安定 |
いがらっぽい |
風量多いと炭材が灰に |
430〜 |
130〜 |
淡黄褐 |
−
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×
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酢液停止:タールが増える |
約3時間 |
450〜 |
180〜 |
淡白色 |
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−
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500〜 |
230〜 |
白青 |
やや甘い芳香 |
−
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4.(炭化末期) |
540〜 |
250〜 |
淡青(煙突口付近が透明に) |
−
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5.精錬開始 |
全開 |
全開 |
20分 |
540〜 |
260〜 |
淡青 |
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−
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6.窯止め |
泥などで密閉 |
全開 |
10分 |
700〜 |
〜380 |
淡紺青:煙口の透明が10cmくらいになったら風口を密閉する。
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ほのかな煙 |
−
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通風口を閉じてから煙突を閉じること |
7.煙口密閉 |
密閉 |
濡れ新聞と重しで密閉 |
〜800 |
−
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−
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−
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8.窯出し |
紙袋などに収納 |
(15時間後) |
60℃以下 |
−
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≒3L
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炭≒10〜15s |
3. 木酢液の採取と精製
(1)採取
ドラムカン窯では、炭材約100sから2〜2.5リットルの原液が採取できる。炭材はコナラで1ヶ月乾燥。
採取は、煙突口が75℃になったとき開始し、130℃で採取停止する。
(2)保存と静置精製
採取した原液は、暗所に3ヶ月以上静置する。酢酸やタール、その他いろいろな樹脂成分が安定化し、上部10%に軽タール分、中間60%に透明な紅茶色の木酢液、下部30%に重タール分に分かれてくる。
(3)精製木酢液の分離:サイフォンを利用
ペットボトルに採取し、静置した液に、細いビニルチューブを挿入し、吸い上げ、順にゆっくり3つのボトルに分離する。
タール分は生ゴミ・ペットの糞尿の消臭、小動物の忌避などに使用できる。
(4)炭による精製
分離した精製木酢液を、野菜の葉面散布や浴用などに使用するときは、クズ炭を5%弱混ぜて、2,3日静置し、残ったタール分を炭に吸収させると、さらに安定したものになる。炭は土壌改良に使用できる。
4.木酢液の活用例
木酢液は、農薬ではないので特定の害虫に効くというのではなく、いろいろな成分が複合して作用する。
精製されてタール分を取り除いた木酢液は人体にも動物にも安全で、公害を出さないので土壌の改良や 消毒、病害虫の駆除などに安心して使用できる。有用な微生物の増殖を促進し、土壌を荒らすことがない。
@消臭 50倍希釈
生ゴミや台所の排水口などいやな匂いのする場所に、スプレーなどで撒布
A樹木の害虫の忌避 50〜100倍希釈
樹木の葉や茎にスプレーで撒布する。虫がつく前に、こまめに撒布する。虫は逃げるだけ。ムカデ,ナメクジ,蛾,ヤスデなどにも効果的。
B小動物の忌避 希釈せず
月2回程度犬や猫などのマーキングするところ(犬や猫の通り道)に直接散布する。
C木酢液を使った堆肥づくり 50〜300倍希釈
地肥に木酢液を混ぜると、発酵のスピードが速くなりアンモニアガスの発散を防ぐ。
使用量は、1平方メートルあたり、原液1リットル程度。発酵がよくなり、高温になるのが 早いので、切り返し(かくはん作業)を早めに行うことが出来る。出来上がった地肥は、土の中の微生物の増殖を助け窒素分を保つことができるので、土になじみやすい良質の肥料となる。
堆肥に、堆肥量の1%以上の割合で(粉炭を粉状にしたもの)を混ぜると、発酵がさらに促進される。30%以上混ぜると粉炭がガスを吸収してくれるので、切り返し(かくはん作業)をする手間が省ける。
D入浴剤
風呂にキャップ3〜6杯をいれて入浴、体の芯までよく温まり、湯冷めしにくくなる。
木酢液を入れると水分子が小さくなるので皮膚によく浸透し、体をじっくり温める。
液に多く含まれる酢酸には皮膚を柔らかくひきしめ、他のいろんな成分が新陳代謝を促進する。
E植物成長促進
300倍〜1000倍に薄めた木酢液を花や野菜の葉っぱ、茎、根元に撒布する。
木酢液には植物の栄養になるもの、植物の根を助ける菌の栄養になるものがたくさん含まれている。
F土壌改良
植え込み7日前まで/10倍の希釈液を土壌に散布する。
植え込み後/100倍の希釈液を土壌散布する。月2〜3回を目途。
土中の有機物の微生物が増殖し、土をやわらかく豊にしてくれる。
5.炭の活用例
@消臭・調湿
部屋の四隅に10〜30kgの炭を置く。車内は少量でOK。冷蔵庫や下駄箱なら200gでも1ヶ月 は大丈夫。空気中のいやなにおいや湿気を炭が吸いとってくれて,爽やかな空気になります。
1ヶ月ごとに日光にさらして使えば半永久的に使える。
A床下調湿
家の床下に一坪(3.3平方m)あたり50kgの炭をしく。炭が床下の湿気を吸いとったり、乾燥時に湿気を吐出すので, 床下の湿度があまり変化せず、カビやシロアリから家を守る。
・木材の耐久性の向上…木材の含水率を14〜20%に保ち変形やひび割れから守る。
・ 脱臭効果…家屋のいやなニオイを防ぐことが出来ます。
・ 取り替え無用…水分の吸着と排出を繰り返す性質は半永久的に機能する。
B浄水
水道水1リットルにつき100g程度の炭を入れ,一昼夜置く。すると・・・ 水道水のにおいが取れ,炭のミネラルが溶けだして、まろやかなミネラルウォーターになる。
・炭はまず水をあてながら,たわしでこすって表面のほこりなどを掃除し、10分くらい煮沸させ,完全に殺菌してから使うこと。
・ ミネラル分は約一週間でなくなるが、においを取るだけなら1ヶ月くらい使える。
・ 備長炭などの白炭や竹炭が適している。
C風呂
炭1kg〜1.5kgをネットに入れ,お風呂に入れる。すると・・・ 塩素が炭に吸い込まれ,お湯がなめらかになり、温泉みたいに体がぽかぽか温まる。
使い終わった後は水を切り、2週間に一度,天日に干すと3ヶ月くらい使える。
D樹木の活性化:土壌改良
枯れかかった樹木(果樹)の枝の一番先あたりの土を30cmくらい掘ると根の一番先が出てくる。そこに木酢液をしみ込ませた粉・粒炭を埋める。
すると・・・ 炭が土の中の微生物を元気にし,木の根を生き返らせ,枯れかかっていた木に緑が戻る。
・すでに枯れてしまった木には効果がない。
・ 木によっては深く掘らないと効果がない場合もある。根の先にたくさん炭を埋めること。
・ 炭はできるだけ細かく砕いて入れる。
E土壌改良
1年くらい雨ざらしにした炭を粉炭にし、土に入れる。ミネラル分の反応速度を遅くする。
通気性・透水性・保水性・窒素の固定・微生物の着生・菌根菌の着生などの促進
F堆肥化の促進
堆肥材と粉炭を2:1の割合で、積み重ねる。
炭が分解ガスを吸収するので、切り返しが不要となる。また炭に着床した微生物が、有機物の分解を促進する。粉炭に木酢液をまぶすとさらに効果を増す。
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